とび色の誘惑

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野戦郵便局の風景印(第66野戦局、第69野戦局)

   

第66野戦局、第69野戦局の風景印

終戦の日、ということで、野戦郵便局の風景印をご紹介しましょう。

野戦郵便局というのは、軍事郵便を取り扱う移動郵便局で、前線で戦う兵士と本国の家族との間を結ぶ大切な役割を担っていました。

第一線で命を的に働いている兵隊さんを一番喜ばせるものは、内地から出す皆さんのお手紙です。これを扱うところを野戦郵便局と申します。
郵便局の兵隊さんは皆さんのお出しになった、あの兵隊さんにお出しになったお手紙を皆集めて、戦争をしている中を兵隊さんのところに配る役目をしております。
この兵隊さんは忙しいです。内地の方から袋に入れて手紙がどっと来ますと「オーライ」と手分けをして、これは何部隊、これは何々部隊、何々部隊と分けると、手紙の山が幾つも出来る。山が出来ると兵隊さんは袋に詰めこんで、驢馬(ロバ)に乗せたり、自動車に積んだりして「行って参ります」といって鉄砲弾の来る方にパッと行きます。自動車も行かないところには小舟に乗せて、エンヤラエンヤラ手紙を持って前進します。

(「野戦郵便局哀話」戦線童話/昭和13年・朝日新聞社刊 ※原文は旧仮名遣い)

当時、この野戦郵便局にも風景印が配備され、上の画像はそのうち、第66野戦局と第69野戦局のものです。

野戦郵便局の風景印は郵便用の通信日付印ではなかったそうで、単なる記念スタンプのようなものだったのでしょうか。

それにしても、戦時中の物資も不足する中、このようなスタンプを製作して使用していたというのですから驚いてしまいますが、さらに、それを官白として残した人がいるのもすごいですね。

第66野戦局の図案は「手紙を見る兵士」。故郷から届いた手紙を読んでいるのか、銃と背嚢を背負ったこの兵士は、何を想っているのでしょう。

第69野戦局の図案は「悪路に悩む軍用自動車」。ぬかるみにはまったトラックを押す兵士の姿が描かれています。

いずれも、生々しい戦争中のワンシーンを切り取ったものですが、再びこのような風景印が使われることのないように祈るばかりです。

最後に、「野戦郵便の歌」というのがありますので、その一節を記しておきます。

国を発(た)つ時 奉公を 誓って固く 握手した
あの想い出が はっきりと
今大陸を 逓信の 旗と進めば 胸に湧く

慰問袋や 郷土(くに)の手紙(ふみ) 無事に届けた 塹壕で
つよい勇士と 抱き合って 涙こぼした 感激は
我等(われら)ばかりが 知るものぞ

我等野戦の 郵便隊
我等誉(ほまれ)の 郵便隊

(「野戦郵便の歌」より/逓信協会雑誌・昭和15年3月号・逓信協会刊)

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