とび色の誘惑

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風景印のカタログ『風景スタンプ集』とは

   

風景スタンプ集は風景印のカタログ

風景印が配備されているのは郵便局全体の約半数。すべての郵便局にあるわけではないので、収集するにあたっては、まずどの局にどんな図柄の風景印があるのかを知りたくなるはず。

ネットで検索すればそれなりの情報は見つかるのですが、網羅的かつ最新の情報をまとめたサイトというのは残念ながら存在しません。日本郵便のサイトには、風景印の新規配備や廃止に関する情報を発表するページがあり、平成16年度以降のものが印影とともに掲載されています。しかし、このページとてすべての風景印が閲覧できるわけではありません。

でも書籍なら、風景印を集めたカタログが2社から出版されています。それぞれの編集時点で使用されている全風景印(現行印)が掲載されており、この風景印カタログを基本に、それ以降の改廃については上記の公式サイトで補完するのがおすすめです。

韓国や台湾にも風景印があり、各郵政はホームページですべての印影を公開しています。しかし比較的数が多い韓国でも使用中の風景印は約350種類に過ぎず、現行印だけでも約11,000種類以上ある日本の場合、日本郵便が公式リストを作成するようなことは期待できないのでしょう。以前は「財団法人全日本郵便切手普及協会」「財団法人郵便文化振興協会」という、いかにも怪しげな郵政省関係の団体が、風景印集を発行していたこともあるのですが。

なお、編集時点より過去に使用されていた風景印(廃止印)を調べるには、過去に出版されたカタログを入手して参照するしかありません。

【1】新・風景スタンプ集(日本郵趣出版)
【2】風景印2014(株式会社鳴美)
【3】風景印2014 CD-R版(株式会社鳴美)
【4】戦前の風景スタンプ集(日本郵趣出版)
【5】全国郵便局10000局 風景スタンプ集(日本郵趣出版)★絶版★

【1】新・風景スタンプ集(日本郵趣出版)

「風景スタンプ」というのはつまり風景印のことです。日本郵趣出版の発行する書籍などでは、昔からこの呼称が使われることが多いようですが、ほかにはあまり使われていません。そもそも風景印自体の知名度が低く、一般には「スタンプ」といったほうが通りがよいからでしょうか。それとも漢字だと堅いイメージになるからでしょうか。

風景印が登場した昭和6(1931)年当時、スタンプ収集がブームでした。駅スタンプや観光地のスタンプだけでなく、旅館やデパート、商店までがスタンプを用意していたのです。そうした流れからか、風景印も当初は「郵便局の記念スタンプ」「名所スタンプ」などと呼ばれていたこともあります。いずれにせよ、郵便局の窓口で「風景スタンプを押してください」と言って通じるのかどうか、私は試したことがないのでわかりません。

さて、この「新・風景スタンプ集」は、地域別に「北海道・東北」「関東・甲信越」「北陸・東海・近畿」「中国・四国・九州・沖縄」の4分冊になっており。いずれもA5版です。

※表紙画像をクリックすると、Amazonの商品ページが表示されます。

※品切れおよび中古品しか表示されない場合は、スタマガネット(郵趣サービス社のネットショップ)で探してみてください。

それぞれの掲載県は次のとおりです。

◎北海道・東北版(平成24年10月15日現在)
北海道・青森県・秋田県・岩手県・山形県・宮城県・福島県
◎関東・甲信越(平成24年3月20日現在) 
茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県・長野県・新潟県
◎北陸・東海・近畿(平成24年6月20日現在)
富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県
◎中国・四国・九州・沖縄(平成25年1月15日現在)
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県

印影は小さめですが、図案の確認には支障ありません。二色刷りで印影は実際に近い色で印刷されています。地方ごとの分冊になっているので持ち運びには便利です。

私が小学生のころは、戦後使われたすべての風景印が1冊で網羅されていました。当時の掲載数は4,530種類(『風景スタンプ集1985』)にすぎず、数においては現在と比べ物になりません。もっとも、数の増加と認知度とがまったく比例していないところが、なんともいえないところではあるのですけれども。

なお、とくに図案の説明においてはデータの記述ミス(というか校閲、校正の不備)が少なくありません。この点については「ほたる」さんのブログ『郵便屋さんからの手紙』で、後述の『風景印2014』の問題とあわせて詳しく検証されています。

 記事はこちら→ 「風景印2014」を読んでみた

ほたるさんは、風景印に描かれた題材について、局へ問い合わせたり、直接足を運んだりしながら丹念に調査されており、頭が下がります。本来は、こうしたことの積み重ねで書籍を作っていただきたいものです。

もちろんすべての風景印について、一次資料にあたるとか、現地取材するとか、そこまでしていては商売にならないのでしょう。また、お役所の公示内容がそもそも間違っていて、それが何十年も引き継がれているケースも中にはありますから、出版社だけを責めても仕方ないのかもしれません。でも、せめて誤字脱字くらいはなくしてください。

こうした本を出し続けてくれているのはさすが日本郵趣出版だと思いますし、収集にあたって参考とするには最低限の情報があるわけで、私も全巻愛用しています。そうした愛用者の一人として、あえて気になる点をここに書いています。ぜひ、後世の収集家に資料として残せるような本、というくらいの編集方針で作ってもらえたら幸いです。

【2】風景印2014(株式会社鳴美)

風景印 2014
B5判・5,966円(税込)

平成25年1月1日現在で使用中の風景印を掲載しています。B5判で528ページもあるので持ち歩きには不向きですが、やはり全国が1冊にまとまっているほうが調べやすいですね。

判型が大きい分、1ページあたりの掲載数も多く、印影のサイズは新・風景スタンプ集より大きい二色刷りです。先ほどの「新・風景スタンプ集」は10年ぶりの改訂でしたが、こちらはほぼ1~2年ごとに新版がでています。

ただ、この「風景印2014」も図案説明には多くの問題箇所があります。6,000円もする、決して安くはない本ですから、クオリティの高いものを期待するわけですが、残念です。

また、「「風景印2014」を読んでみた」で指摘されているように、『新・風景スタンプ集』の図案説明を流用しているフシがあり、正しい情報をわざわざ間違った情報に書き換えてしまった箇所もあるとか。間違った回答まで書き写してカンニングがばれる、みたいなことでお粗末すぎます。

とはいえ、どの局にどんな風景印があるのか、その概要を調べるには十分な読み応えのある貴重な一冊です。『新・風景スタンプ集』同様、今後発行される版ではぜひデータの精度を高めていただけるよう切望します。

【3】風景印2014 CD-R版(株式会社鳴美発行)

風景印2014 CD-R版
6,172円(税込)

こちらは、先ほどの「風景印2014」の内容をそのままPDF化して、CD-Rに収めたものです(ただし、印影の色は黒)。データですから、パソコン上で閲覧します。またノートパソコンに保存したり、オンラインストレージサービスを利用してスマートフォンやタブレットからアクセスすれば、外出先でも自由に閲覧できます。必要なページだけをプリントアウトしてもよいでしょう。重たい書籍を持ち歩く必要がないわけで、これは大きなメリットです。

また、PDFデータは検索機能が使えます。郵便局名で検索して、風景印が配備されている局かどうかを調べる、といったことが簡単にできるので、とても重宝します。私は書籍版とCD-R版を両方入手してみましたが、ほとんどCD-R版ばかり使っています。やっぱりキーワードで検索できるのが便利なんですよね。

ただ、冊子の内容そのままなので、残念ながら、先述の記載ミスなどもそのままです。せっかく検索ができるのに、表記が統一されていないなどの問題で、うまく検索できないことがあります。

発行部数と費用との兼ね合いもあるとは思いますが、こちらは書籍にはない特性をもっと生かして、風景印のデータベースとして使えるようなものに進化させてもらえたらいいなと期待しています。

【4】戦前の風景スタンプ集(日本郵趣出版発行)

戦前の風景スタンプ集
A5判・1,955円(税込)

風景印の使用が開始された昭和6年から、戦争の激化で昭和15年に新規使用が中止されるまでの風景印を集めた一冊です。風景印は日本本土以外にも、朝鮮、満州、台湾、南洋、樺太など、日本の領土とされたあらゆる地域でも使用されましたが、ほぼすべての印影が掲載されており、さまざまな図案からは当時の雰囲気がよく伝わってきます。

もちろん、これらの風景印を収集するには切手商やオークションなどで購入するしかありませんが、そのデザインを眺めているだけでも、なかなか楽しいですよ。

【5】全国郵便局10000局 風景スタンプ集(日本郵趣出版)★絶版★

現行印(現在郵便局で押印できる風景印)以外にも、図案の変更や廃局などで使われなくなった風景印は多数あり、こちらも切手商やオークションなどで購入することができます。しかし残念ながら、そうした廃止印まですべて網羅した書籍は現在出版されていません。

この『全国郵便局10000局 風景スタンプ集』はすでに絶版ですので新刊書店では購入できませんが、1998年までに使用された戦後の風景印をすべて掲載したいわば「風景印の百科事典」で、ぜひ備えておきたい一冊。

上記画像からAmazonのサイトへリンクしており、古書店の在庫を購入することができますが、絶版書籍なのでかなりお高いのが難点です。私は数年前にネットオークションで入手しましたが、そのときは2,000円程度でした。ただ、私の知る限り年間で1~2冊程度しか出品されませんので根気よく待ってみてください。

もっとも、参照するだけなら、国会図書館やお近くの公共図書館などにも置いてあることがありますので、蔵書検索をしてみるとよいと思います。

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