とび色の誘惑

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東京中央郵便局の風景印(東京都千代田区)

   

東京中央郵便局、風景印の変遷をたどる

東京中央郵便局の風景印

【使用期間】平成24(2012)年7月17日~
【図案説明】東京駅丸の内駅舎とJPタワー
【使用切手】東京駅(ふるさと切手)/平成元年発行

東京都千代田区・東京中央(とうきょうちゅうおう)郵便局の風景印です。

東京中央郵便局は、旧局舎の改築にともない、2008年ごろより周辺数ヵ所の仮店舗に分散して営業していました。

このたび改築が完了し、旧局舎の場所には地上38階建ての「JPタワー」がオープン、これに合わせて、風景印の図案が変更されました。

東京中央郵便局の入るJPタワー

東京駅の目の前に建つJPタワー

そんなに高収益な企業でもないのに、なぜこんな立派なビルが建てられるのかよくわかりませんが、とにかく、日本を代表する郵便局舎が誕生したことには違いありません(もっとも、ほとんどの部分がテナントスペースで、郵便局の窓口そのものは1階ですが)。

そのJPタワーの低層階部分には、旧局舎の外観が「保存」されています。

旧局舎は昭和6年に竣工したもので、「重要文化財として指定を検討する価値を有している」(文化庁担当官)建築でした。

2009年、鳩山邦夫総務大臣(当時)が、そんなに価値のある建物を壊すとは何ごとだと、突如改築計画中止を求める発言をして話題となったのを、覚えている方も多いでしょう。

60名以上の超党派国会議員による保存に向けた取り組みなどもありましたが、結局それは実りませんでした。

そんな経緯も含め、外観の一部を残す「ファサード保存」という方法に落ち着いたのでしょうか(京都府京都市、中京郵便局/支店の風景印も参照ください)。

しかし、これはいわば「建築物の剥製」で、文化的な価値はほぼゼロ、そして未来永劫、元通りにすることはできません。

個人的には、こんな状態を見せつけられるくらいなら、いっそのことすっかり取り壊してくれたほうがさっぱりするのですけれど。

東京駅丸の内駅舎

屋根のドームが復元された東京駅丸の内駅舎(2012年5月)

一方、東京駅丸の内駅舎は、創建当時の姿に戻したうえで保存された状態が描かれました。

元の姿に戻す、という必要があったのかどうかはともかく、赤レンガの駅舎は見るからにレトロな感じ。

それに対して郵便局舎の見た目は地味、興味のない人からすれば、ただの古ぼけたビルにしか見えないのでしょう。

JR東日本は、この駅舎を取り壊さない代わりに、「空中権」を日本郵政に売り渡しました。

特例容積率適用区域制度、というのだそうで、新丸ビルなど周辺のいくつかのビルにも、駅舎の空中権は分割譲渡されています。

本来駅舎を取り壊して高層ビルを建てることもできるのに、それをしない見返りのようなもので、これにより、JPタワーは通常より多い1,630%の容積率を確保しているといいます。

東京駅丸の内駅舎の保存は、東京中央郵便局旧局舎解体という、いくばくかの犠牲のうえに成り立っているのです。

今回の新図案は、この両者をただ並べただけの淡白なデザインですが、それだけに、両者のたどった運命の対比を際立たせていると、言えなくもありません。

【旧図案】東京中央郵便局の風景印(平成8年使用開始)

東京中央郵便局の風景印(旧)

【使用期間】平成8(1996)年4月24日~平成24(2012)年7月13日
【図案説明】東京駅赤レンガ駅舎と八重洲ビル街
【使用切手】東京駅(ふるさと切手)/平成元年発行

こちらは切手と同様、改修前の駅舎を描いたデザインです。

一時期はこの駅舎にも建て替えの話が出ましたが、反対運動などもあり、一転して現在では重要文化財指定を受けるに至っています。

近年私たちが目にしていた駅舎は、東京大空襲で大きく破壊され、戦後に応急処置したものだったのですね。

とはいえ、60年も使用されたわけですからそれなりに風景として馴染んでいますし、私にとっても八角形の屋根が東京駅でした。

復元という行為にどれくらいの価値があるのかよくわかりませんが、たしかに建築としてのバランスにしても、ボリューム感にしても、当初設計のほうがよい姿であるとは思います。

いずれにせよ復元前の駅舎は、風景印と切手、そして私達の記憶の中にこれからも生き続けます。

東京駅丸の内駅舎

復元工事前の東京駅丸の内駅舎(2006年5月)

【旧図案】東京中央郵便局の風景印(昭和23年使用開始)

東京中央郵便局の風景印(旧印)

【使用期間】昭和23(1948)年1月1日~平成8(1996)年4月23日
【図案説明】二重橋と国会議事堂

ずばり、私にとって東京中央郵便局の風景印といえば、これです。

戦後約50年も使われましたから、同じように感じる方も多いことでしょう。

見慣れているからかもしれませんが、左上に国会議事堂、手前に二重橋というとてもバランスのよい構図が、「東京中央」という局名にぴったり合っています。

この図案は、当時数多くの切手や風景印のデザインを手がけた郵政省のデザイナー、加曾利鼎造氏の作品。

加曾利氏のデザインによる風景印は、麻布、本郷、国会内、小岩、神田など、東京都内の郵便局でもまだまだたくさん使われています。

この印影の押印日付である昭和59年2月1日は、私の住んでいる町田市の市制記念日で、当時は学校がお休みでした。

そこで、小学生だった私は社会科見学もかねて官庁街の風景印巡りへ出かけたんです。

その最後に訪問したのがここ東京中央郵便局。東京に大雪が降った直後で、道路や植え込みにはかなり雪が積もっていたことを覚えています。

当時は、東京中央郵便局にあった記念切手販売コーナーに何度も通って、子どもの小遣いで買える切手を少しずつ少しずつ買っていたなあ。

【戦前】東京中央郵便局の風景印(昭和6年始用開始)

東京中央郵便局の風景印(戦前)

【使用開始】昭和6(1931)年12月10日
【図案説明】皇居二重橋

日本に初めて風景印が登場した昭和6年に使用開始となった、戦前の風景印です。

旧局舎が竣工したのも昭和6(1931)年でしたが、局舎の使用開始は昭和8(1933)年で、まだこの場所では営業していないころですね。

東京駅丸の内駅舎は、辰野金吾の設計により大正3(1914)年に建てられていますが、今のように高層ビルなどなかった時代、その威風堂々たる駅舎は、遠くからもよく見えるランドマークだったことでしょう。

そして、ちょうどその向かいに建てられたのが東京中央郵便局でした。

赤レンガ造りの駅舎と、白いコンクリートの局舎。

その対比は当時の人々にとって鮮烈な印象を与えたことでしょうね。

東京中央郵便局仮店舗

7/13までの営業で使用された、東京中央郵便局の仮店舗。東京駅八重洲口にあった

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